蔓薔薇
アキラは、自分の中に込み上げ
てくるいろんな想いに、ひどく
混乱していた。
 
中でも、死を選んだセリナさん
への言いようの無い、怒りにも
似た気持ちに支配され、頭を
抱える。

彼女が瞳を開けたのは
その翌日の事だった。

セリナさんの傍へ、赤ちゃんを
抱いた女性が近寄り、彼女の頬
を強く打った。

「こんな小さな子を残して
 アンタはどこに行く気なの
 しっかりしなさい・・・」

女性の声は涙声に変わり
セリナさんは涙を流す。

「ごめんなさい・・・」

「イサくん、アキちゃん
 いつも、ごめんなさいね
  
 セリナに振り回されて
 ばかりで・・・

 本当にこの子は
 馬鹿なんだから・・・」

セリナさんによく似た、その人
は彼女の母親だと知る。
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