蔓薔薇
アキラは、セリナさんの傍へ
近寄り、椅子に腰を下ろし
自分を見つめる、彼女の瞳を
見つめた。

彼女の意識が戻らない間
もしこの世からセリが
いなくなってしまったら・・

そう、何度も思う度に
身を削るような想いがした

アキラは、包帯の巻かれた
彼女の手を優しく握り締め
愛しい人の体温に心から
安心した。
 
「セリ、無事で良かった」

「アキちゃん、ごめんね」  

イサが、セリナさんの傍に
近寄ると、アキラは二人の
邪魔をしないように席を立ち
病室の外へと出て行く。
 
「セリ・・・ごめん」

彼女の頬を、とても綺麗な涙
が流れる。

「ごめんなさい・・・イサ」
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