蔓薔薇
「私はまた、貴方の心を
 傷つけてしまう
 そう、分かっていたのに・・
 気がついた時は、もう遅くて
  
 貴方の愛が手に入らないのな
 ら、この世に生きる意味が
 ないように思えた」

イサは、震える手で彼女の
傷ついた手に触れる。

私は、病室の外へ出て行く。
  
セリナさんの何重にも包帯が
巻かれた手首を見て、私は
思い知らされる。
 
彼女の、イサに対する
狂おしいまでの愛を。

私は、怖い・・・

彼女をこれ以上苦しめてまで
彼の手をとる事が私にできる?

「ミオ・・・ごめんな
 今だけ、アニキをセリナに」

アキラ、貴方の気持ちが
私には分かる。
 
私たちは、あの領域に
踏み込む事はできない。
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