蔓薔薇
ずっと迷いの中、私は彷徨う

今日は仕事が休日の為、イサと
一緒にセリナさんのお見舞いへ
向かった。

「イサ、待ってたの・・・」

イサの後に続いて、病室へ入る
私の姿にキラキラと輝いていた
彼女の表情が一気に曇る。

「ミオちゃん・・・」

彼女の綺麗な瞳は言う。
  
イサと二人だけの時間を
邪魔しないで・・・と。

私はその瞳に耐えられず、花瓶
を手に病室を出た。
  
花を活けて戻る私は、病室の外
楽しそうに話し、イサの手に
甘える彼女の姿を見た。

あんなに楽しそうに、無邪気に
笑う彼女。

手首に巻かれた包帯の下に
痛々しい傷を持つ彼女。

その二人は、どちらとも紛れも
無いセリナさんの姿。

彼女の傍で優しく微笑み
見守る彼がいた。
   
< 309 / 361 >

この作品をシェア

pagetop