蔓薔薇
私たちは愛し合い、そして眠る

どうして、大切なあの部屋から
貴方は、出て行ってしまうの?

貴方に、どうしても問いたい。

どうしてなの・・・

深呼吸をし、私は工房に
ゆっくりと近寄る。
 
いつものようにドアから
中を覗く。
 
すると、彼は真剣な眼差しで
手元を見つめ製作をしていた

眼鏡の下のイサの瞳に、私は
魅せられ、貴方に触れたくて
しかたがなくなる・・・

私は黙ったまま、静かにドア
を開け、工房内へ、重い一歩
を踏み入れた。

彼は、私を見ることなく
手元を見たまま話す。

「アキラ、ごめん」
 
大好きな彼の声・・・
 
この声を私は、どれ程までに
聞きたかったことか。
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