蔓薔薇
「今、手が離せないんだ
 待って、て・・・」  

イサは私の事を、二度見して
製作の手を止め、その場に
立ち上がる。

「美桜・・・」

愛しい人が私の名を呼び
 
私に、ゆっくりと近づき
 
震える腕で、私を、優しく
抱き寄せる。

彼の香りに、私は安心する。

「何処にいたの・・・
 心配した」

そう呟いた後、彼は何も
話さずに、ただ、私を
抱き締める腕の力を強めた。
  
私をもう二度と、離さない様
強く。

その場で抱き合ったまま
時は止まる。
 
二人の体温は混ざり合い
ひとつになる。

イサの心臓の鼓動が聞こえる
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