蔓薔薇
だけど、私はその気持ちを
すぐに押さえ込んだ。

何故なら、

『帰れば・・・』

貴方の冷たさは、あの日の
ヨウジにも似ている。

タクシーは、家の近くで
停車した。
 
私の差し出したお金を
貴方は受け取らない。
 
「いいよ
 それより、早く帰って
 休む方がいい
 それじゃ・・・

 運転手さん
 さっきの場所まで
 戻ってください」

タクシーのドアは音を立てて
閉まり、車は、また走り出す
 
私は、頭を深く下げた後
彼の乗るタクシーが角を曲がり
見えなくなるまで見送っていた
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