蔓薔薇
腹帯を巻いて少し大きくなった
お腹で荷物を持とうとした
私の手からイサは、荷物を奪う

「俺が持つから美桜はいいよ」

この言葉は、イサの口癖になる

「大丈夫だよ
 もう安定期だもの」

私は彼に甘やかされながら
妊婦生活を送っている。

新居の外壁には、前住人さまが
手をかけて育てた蔓薔薇が這う

三人で住むには、今の住居は
狭すぎると判断してやむ終えず
大切な思い出のつまったあの家
を出ることにした。
 
工房も兼ねた住居を探していた
私たちは、この家に出会う。

古い建物ではあるが、私は外壁
に豪快に咲き乱れるこの蔓薔薇
を見て、一目で、ここが
気に入ってしまう。
 
花の手入れなど

後先は考えずに。
 
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