蔓薔薇

想いが募る

室内に静寂が漂う中

時が止まる・・・
 
それは、たった数分の出来事
だったが、彼の心の空しさ
寂しさが十分に触れる体の温度
から私へと伝わってきた。

私は彼から離れ、床に
落ちているネックレスを拾い
彼に差し出した。

それを受け取る彼の手。
 
指は細くて長いが、節々は
しっかりとしていて
ゴツゴツとした中に渋みが
ある職人さんの手だった。

彼は、重い口を開き

ゆっくりとした口調で話す。

「ありがとう・・・

 こういう言い争いは
 俺たちの間には、よくある事
 だから心配しないで
  
 彼女は、昔から自分の意見が
 通らないと、ちょっとした事
 にも、感情を抑えられなく
 なるんだ
  
 ああなると、もう俺じゃ無理
  
 あいつの心を静めるのは
 ずっと

 アキラの役目なんだ」
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