蔓薔薇
彼は、テーブルの上に置かれた
煙草の箱から一本取り出した

銜えた煙草に火を付けようと
したその時、彼は少し考えて
吸うのをやめて煙草を置く。

「ごめん・・・

 今日はもう、彼女は
 ここへは戻って来ないよ
  
 君には、長居をさせて
 しまって悪かったね
  
 あいつらに
 付き合ってくれてありがとう
  
 そうだ、請求書を息吹さんに
 渡してください
  
 お願いします」

「はい、明日
 ちゃんと店長に渡します
  
 私もつい楽しくて
 時間を忘れて
 
 こんな時間まで・・・
 ごめんなさい
  
 それでは、失礼します」

工房を出て行く私に、彼は言う

「楽しかったなら、また
 いつでもおいで
  
 セリの
 友達になってやってよ」

彼は、とても優しい顔つきで
そう告げた。
 
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