蔓薔薇
私は目を覚まし、夢と同じに
涙する。
 
涙のせいで腫れた瞳を、鏡越し
に見つめながら、私は自分自身
に言い聞かせた。

アキラさんの事はもう忘れよう
・・・
 
私は、彼の事を何も知らない
 
この気持ちは、恋ではない。
 
彼に会わなければ、忘れられる

街で見かけても知らない
フリをしよう。
 
あの工房へも、もう行くのは
止そう。
 
目を閉じた私は、何度も心の中
で繰り返す。
 
この気持ちは恋ではない・・・

恋ではない・・・と。

もう、ここへは来ない・・・

そう決めていたのに、私はまた
工房の前に立っている。
 
工房の中を覗くと、イサオさん
は眼鏡をはめ、アクセサリーの
製作を行なっていた。

尊くておかしがたい雰囲気に
私はドアを開ける事ができずに
いた。
 
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