蔓薔薇
「ミオちゃん、待ってたよ
 さあ、入って
 
 イサは今、手が離せないから
 ちょっと待っててね」

私の存在に気づいたセリナさん
が工房のドアを開け、私を中へ
と連れて行ってくれた。

道具を使い、手元を真剣に
見つめる眼鏡の下のイサオさん
の瞳に私は、ただ見惚れていた

「あれはね、糸ノコを
 使って銀板を切ってる
 ところなの
  
 さあ
 見ていても退屈でしょう
 
 こちらへどうぞ」

退屈だなんて、そんな事無い
 
イサオさんの手の動き、真剣な
眼差しを、このままずっと
見つめていたい・・・私がいた
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