時計の針が止まるまで


蹴飛ばされて目覚めるという、なんとも辛い起こされ方が二週間くらい続いたある日のこと。


土曜日だというのに、相変わらず朝早くに起こしてくる目覚まし。


床にべたっと落ちた私の頭に、温かい手の感触が伝わってきた。


「春子、十五年間ありがとな」


ふわっと笑う男を見て、なんだか嫌な予感がよぎる私。


「春子の3歳の誕生日から今日の18歳の誕生日まで、ぴったり十五年間。ずっと俺は春子を見てきた」


「大事に使ってくれてありがとな」


頭をなでられている感触が、だんだんと薄れていって。


目の前の男の姿が、さらさらと消えていく。


鼻の奥がツンとして、視界がゆがんで見えなくなった。


あぁ、お別れなんだ。


フローリングの上に、コトリと落ちた目覚まし時計。


針は動かなくなっていた。


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