starlight
葵が出て行って、
放心状態だった俺の腕に、
咲が絡みついた。
「先生とか言ってたけど、あのコ生徒?」
「......」
「やるねぇ♪さすがあたしの圭吾」
「帰れ」
「え?」
「...帰れ」
「はぁ?何マジであんなガキのこと
好きになってんの?
確かに清楚で可愛いかもだけど、
あんなの圭吾の好みじゃないでしょ」
「うるせぇ」
一瞬空気が張り詰める。
「...じゃあ悲しんでるみたいだし?
慰めてあげるよ」
咲の手が、俺のボタンにかかる。
とんがった真っ赤なネイルが
俺の白いシャツに際立って見える。
......血が出てるみたいだ。
初めてこんなにも愛しく想えた人。
葵。
そんな葵を失って
ズタズタになった俺の心には、
悲しさとか悔しさとか怒りとか
そんなごちゃごちゃしたものは無くて。
ただただ空虚感だけが
止めどなく溢れていた。
ボタンを外そうとする咲の手を止める。
咲が悪いんじゃない。
俺が中途半端だった。
中途半端に葵を気遣って、
中途半端に愛を伝えて。
中途半端だから傷つけた。
守れなかった。
寂しくていつも震える葵を。
守れなかった。