starlight
「では、次の単元も予習しておくように。」
それから1週間ほど過ぎ、
今日も葵のクラスの授業があった。
葵がいる授業は毎回緊張する。
俺はこれから葵が卒業するまで毎回
ドキドキしながら授業するのか。
理科室を出て行く生徒達に紛れる
葵の背中を見送った後、
思わずはぁ、とため息をつく。
「何でため息なんかついてるんですか」
俺の他に誰もいないはずの理科室に
男の声が響く。
驚いて振り向くと、矢崎春樹の姿があった。
「......矢崎か。何してるんだ?
質問か?」
「質問ならさっきしましたけど。
何でため息ついてるのか、って」
生徒の中でも特に背の高い矢崎。
おそらく俺と同じくらいだろう。
その矢崎が、教壇に立つ俺を
突き刺すような眼差しで見上げている。
かなりの威圧感に、少したじろぐ。
「......何でって」
「俺、先生と葵のこと、知ってるんです」
「え...」
「葵は、俺にだけ特別に話してくれました。」
「そうか...」
「先生」
「ん?」
「何で葵のこと裏切ったんですか。」
矢崎の目には怒りが浮かんでいた。