starlight
「裏切った...つもりはない」
「意味分かんないんですけど」
「別れた日の夜のことだろう?」
「...はい。」
俺は真相を話した。
裏切ったんじゃないって伝えたかった。
「...ということなんだ。
言い訳に聞こえるかもしれないけど...」
「それ、言い訳にしか聞こえませんよ」
「えっ?」
真相を話しても、
矢崎の目にはいまだ怒りが浮かんでいた。
「その話を信じるとして、
それでも現にあんたは葵を傷つけた。
葵は...葵は人一倍寂しがり屋だし、
人をなかなか信じられない人なんです。」
「あぁ...分かってる」
「そんな葵が、あんたと出逢ってから、
心から笑うようになった。
葵はあんたを信じてた。心から」
「......」
「葵は今、人を信じられない
前の状態に戻ってる。
理由が何であれ、そうしたのはあんただ」
「あぁ...そうだな」
「俺はあんただから、
葵を任せられると思ったんです。
葵を守ってくれると思ったんです。」
「......」
「こないだの頬の痕だって、
本なわけないって
先生だって気付いてるでしょう。」
「...そうだな」
「そんなとき、葵を助けてやれるのは
先生しかいないんです。
俺が声をかけても、
作り笑いさせることしかできない。
葵が本当に求めてるのはあんたなんだ」
葵......
思い出したよ、俺。
お前と初めてを過ごした夜、
冷たいお前の身体を抱き締めて、
俺が絶対守るって誓ったこと。
何度傷付け合っても、何があっても、
葵を愛する気持ちだけは変えないって、
自分に誓ったこと。
何度間違えてもいい。
俺のことを信じられなくてもいい。
葵が俺を信じられなくても、
俺は葵を信じる。
葵が俺を愛せなくても、
俺は葵を愛する。
俺が葵を好きだってことだけは、
この嘘にまみれた世界の中でも、
嘘じゃないから。