SWEET&HOT~甘いのと辛いのと~
私は痺れる足で父に背を向け、ゆっくりと歩き出す。



そんな私の背中に、父が言葉を投げつけた。



「そうか…おはぎでも作ってもらおうと思ったんだが…残念だ」



立ち止まらず、振り返らず言い返す。



「私が不器用なの知ってるでしょ…?」



「…そうだな。お前は不器用だから今まで何もやってこなかったんだ。だから勉強を頑張りなさい。そっちはちゃんと頑張れると…得意だと知っているからな」



襖の前で、思わずピタリと立ち止まる。



…勉強を好き好んでやる人なんて…ましてや得意な奴なんかいない。



誰だって嫌々なんだよ。



それに、不器用だからって…“やってこなかった”わけじゃない。お前が“やらせてくれなかった”んだろーが。



…そんなこと考えていても、心の中で悪口を言っていても…嬉しい気持ちで満たされていても、私は感情を表情には出さない。



だって…私は…。



人呼んで、氷の女だから。



「…そう。じゃあ…部屋に戻るわね」



振り向かずにそう言うと、私は襖を開き、居間を出ると襖を閉め、逃げるように自分の部屋へと走っていった。
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