真珠と青いマフラー
春
風が運んだ淡い花びら
春。
そこそこ長い黒髪を風邪になびかせながら校門を通る眼鏡の女の子。
私は今日からこの学校に通うことになった。
千草は手に握る地図を見ながらこの高校のシンボルともいえるものに目をやった。
「…ぁ。」
さすがこの学校の誇る正門から校舎までの道に左右対称に植えられた10本の桜だ。
「きれい…。」
ちなみに反対側の裏門から校舎までの道これまた6本のイチョウの木が植えられている。
「…そうだ。」
手をゆっくりと上げ落ちてくる花を待つ。
押し花にするのだ。
ひらりひらりと落ちる花がまるで吸い込まれるように千草の元におさまった。
よくみると五枚ちゃんとついた桜が落ちた。
「よし…と。」
それを紙に挟みいつも読んでいる本のしおり代わりにした。