five
慧はブラックの缶コーヒーの蓋を開けた。
コーヒーのにおいが穂のかに香る。
慧は、昔から嗜好が大人っぽくて、あたしは必死に真似しようと頑張ってたんだ。
だから、苦手なグレープフルーツジュースも飲めるようになったし、好き嫌いも減った。
小さいころは何でも慧の真似ばかりしてた。
未だにブラックのコーヒーは苦手だけどね。
ぼんやり小さい頃の記憶を辿る。
「まぁ、小那美も少しは大人になったよ。」
と、慧は照れながら言った。
「ふふっ」
あたしも照れくさくて、笑って見せた。