five
「あたしの話はいいから、慧の話を聞かせてよ!」
話って言っても、特にどこが好きとか、いつから好きとかはないけど…。
物心ついた時には、もう小那美の存在が大きかったんだ。
ただ、その感情を知ったのは両親が離婚した日だった。
小学生だった俺にはどうすることもできない現実だった。
それを子供ながらに思った俺は反対しなかったし、何も言わなかった。
そんなとき、ずっと側にいてくれたのが小那美だった。
強がりの俺の涙を見ないふりして、ずっと手を握っていてくれた。
その手があまりにも温かくて、優しくて、離したくないと思ったんだ。
そして、その手をずっと守りたいと、ただそう思ったんだ。