five
愛羅は助手席に座ってご機嫌のようだ。
あたしは黙って後ろに座る。
「大丈夫か?小那美?」
「はい。」
心配する先生にあたしの良心が痛んだ。
愛羅は楽しそうに、先生に話しかけている。
普段大人っぽい愛羅が『一人の恋する少女』になっていた。
先生はダルそうに、相槌をうっている。
案外、お似合いだとあたしは思った。
車での山登りはあっという間で、愛羅は少し物足りなそうだった。
車から降りる時、先生は、
「付き合わせて悪かったな。」
と、呟いた。
浅丘先生は愛羅の嘘に気づいていたみたいだった。