あなたのメール、代行します。
「ナイトくん、どうだったどうだった? 『君のための物語』!」


「うん、結構良かったな」


 本当に、意外と良い話だった。期待してなかったけど。結城龍之介監督作品だし。

でも、涙は出てこなかった。芽衣さんがあまりにも泣きすぎてて、少しだけ引いたってのもあるけど。

あと、結局ポップコーンが食べれなくて、悔しかったってのもあるけど。


「でもさ、なんていうか、泣けはしなかったな。たぶん、俺に向けられた話じゃなかったから」


「えっとえっと、どういうこと?」


「主人公が別れを告げられるシーンがあったろ? それで、主人公は自分の想いを押し殺した」


「うんうん。そうだねそうだね」


「これってさ、結城龍之介が“大切な誰かに伝えることが出来なかった想い”じゃないのかな?」


「えっとえっと、よくわかんないかも。ありがとう」


「はは、つまりさ、この映画は結城龍之介から誰かへの手紙みたいなもんじゃないかってこと」


「うんうん、そうかもそうかも」


「俺宛てじゃなくて、その誰か宛ての話だったから、泣けなかった。のかもな」


「うんうん、『君のための物語』っていうタイトルも、そういう想いが込められてるのかもね」
< 31 / 52 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop