あなたのメール、代行します。
真実
 畳の上に寝転がって、コンクリートの天井を見つめる。この部屋には表情がない。

どこを見ても同じ色で、なんだか牢獄の中にでもいるような気分になる。

だけど、こんなつまらない部屋でも、もうすぐ入らなくなるかもしれないと考えると、寂しくなった。

ダメだ、感情を持っちゃいけない。

コンクリートのように感情をなくさないと、きっと俺は、怖くて答えが聞けなくなる。

俺は、大仏さんに、芽衣さんと付き合ってると言われるのが怖いんだ。

今までの楽しいも、面白いも、全部が嘘みたいに感じてしまうから。

このまま何も聞かずにサークルを辞めれば、俺は余計なことを何も聞かなくてすむ。

でも、現実から逃げたら、俺はきっと、また同じ事を繰り返すだろう。

フラれた理由がわからないと、俺はまた面白いメールを誰かに送って、またフラれることになる気がする。


「おい、ナイト。デートどうだった?」


 大仏さんがのん気な声を出しながら、サークル室に入ってくる。

なんでそんなテンションが高いんだよ。芽衣さんと付き合ってるからか?

俺と大仏さんで、何が違うっていうんだよ。


「別に……」


「あれ? いつものやんないの? 振り向くとそこには大仏さんがいた……みたいなヤツ」


「ちょっ、ちょちょーい。いつも同じパターンのクドいツッコミをする大仏さんか」


「ちょっ、ちょちょーい! おまえ、俺バカにしてんだろ! いいだろう、オマエがそんな態度なら、つっこんでやんないからな!」


「大仏さんこそ、どうだったんだよ」


「あ? なにがだよ」


「昨日、幻の先輩……芽衣さんと、デートだったんじゃないの?」


 大仏さんが何も言わずに俺の顔を見る。やっぱりそうかよ。否定出来ないんじゃん。

俺、今まではしゃいで、バカみたいだ。


「……そうか、見られてたのか。でも、付き合ってはないぞ。あいつは、元カノだ」
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