夢でもいい
「別れるなんて嫌だよ！なんでそんな簡単にいうの？」
もっともだと、七海も思った。
「ごめんね、もう翔太のともだち関係に干渉しないから、別れるなんて言わないで！」
美雪の瞳からは、ポタポタと涙がこぼれ落ちはじめた。
そんな美雪を前にして、翔太は優しい笑みを浮かべながら、語りかけるように話した。

「謝らなくていいよ、美雪。」

翔太の一言で一瞬、美雪の顔が明るくなった。が、それは間違いだった。翔太はつづけた。

「美雪が悪いんじゃない。美雪の考えとか、価値観とかに俺が合わせられない。ただそれだけ。だからさ、別れるんだ。」

美雪の表情が再びくもった。しかし彼女は、手の甲で涙をぬぐいながら翔太に訴えかけた。

「なら、翔太がわたしに合わせなくていい。わたしが翔太に合わせるよ！」
横で見ていた七海は、美雪の必死な姿に同情した。
つい最近、七海は彼氏と別れた。
嫌いになった訳ではないが、マネージャーで忙しかった七海にとって、恋愛が第一優先ではなくなったのだ。
恋愛と部活、優先させるものが彼氏と違った。
彼氏は、七海とやり直したいと言った。
しかしそれは出来ないことで、話し合いの結果、別れることになった。

別れる事がわかっていても、話し合うことで自分を納得させ、次に歩きだせる。
自分にとっても相手にとっとも、大切なこと。

美雪に彼氏の姿を重ねてしまった七海は、同情心から、つい助け舟を出してしまった。
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