夢でもいい
「…翔太、美雪ちゃんのこと送って行きなよ。」
「えっ…?」
翔太と美雪は少し驚いて、七海を見た。

「別れたから、はい、さよならなんて酷すぎるでしょ。同じ女の子として、ちょっとねぇ、見過ごせないよ。」
「でも、お前は美雪にぶん殴られそうだったんだぞ?」
「それとこれとは別だよ。まあ、はっ倒されたけど、殴られてはいないし。とにかくさ、頭を冷やしながら話しながら帰りなよ!」

翔太は、う~んと少し不機嫌そうに七海から美雪に目線をうつした。

「とにかく、早く帰りなよ。そろそろお母さん帰ってくるし、翔太も修羅場があったなんて知られたら、我が家への出入り禁止になるよ!」

まだ不機嫌そうな顔だったが、七海に急かされて、翔太は帰り支度をすると美雪を連れて帰って行った。

帰りぎわ、美雪は何かを言いたげに七海を見たが何も言えず、軽く会釈をすると、翔太と一緒に帰って行った。

翔太に気をつかうように、少し後を歩いて。

「はぁ~」
七海は、ふたりを見送り、大きいため息をつきながら部屋に戻った。
ベッドにごろんと横たわると、さっき起こった出来事を思い出しながら、考えた。

-翔太のあの冷たい態度って、何?-


いつもの明るくて人懐っこい翔太からは、想像がつかない姿だった。

次の日、学校で会った翔太はいつもと変わった様子はなかった。
翔太は七海に気づくと、苦笑いしながら近づいてきた。
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