夢でもいい
「よぉ、おはよう!その…、昨日は悪かったな!」
「えっ、あぁ、いいのよ。で、あのあと、ちゃんと美雪ちゃんと話し合った?」
翔太は無言でうなずいた。

「やっぱり、別れたんだ?」
翔太は小さく笑いながら、七海を見た。
「七海はなんでもお見通しだな!…美雪は納得できないって言ってたけど、俺は無理だからって伝えたら分かってくれた。」
七海が疑うように翔太を見ると、翔太は慌てて弁解した。
「おい!ちゃんと冷静に話し合った結果だぞ?…俺、無理なんだよ。七海には冷たいって言われるかもしれないけどさ、心の中で、相手への思いが切れたっていうのかな?そうなると、もう一緒にはいれないんだ。」

分かりやすい説明だった。
確かに、自分は、部活を優先させるために、彼氏と別れた。
本当に好きなら、どちらも諦めたくないと思っただろう。
しかし、翔太の言う「思いが切れた」状態になり、別れを選んだ。
「話し合い」という、機会をもうけて。

「なぁ、七海はさ、彼氏と別れる時は話し合ったりするの?」

翔太の質問に心臓が大きくなった。

「えっ、…うん、当たり前じゃない。」

「ふ~ん。でもさ、別れる気持ちが決まってるのに、なんで?」

翔太の表情と声に、何も読み取れなかった。

― 恐い ―

心を見透かされたような感覚と、まったく自分と相いれない考えとの出会い。

七海の顔色がくもった。
翔太は心配そうな顔で、七海を見た。

心配そうな翔太の顔を見て、七海の顔色はますます悪くなっていった。
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