夢でもいい
熱々だったポテトが、すっかり冷たくなってしまった。
七海の顔は、話しをするうちにけわしくなってしまった。
みちるは黙ったまま、七海を静かに見つめた。

七海は、はっとした。
わたしはただ、翔太と美雪の別れのシーンを話しただけではないのか?

みちるは、どう思っただろう?
翔太が、興味のなくなった彼女とすんなり別れる、非道な男だと思っただろうか?

七海が不安に思っていると、みちるがにっこりと微笑んだ。

「ありがとう。」
「えっ?」
七海がぽかんとして聞きかえした。
「話しずらいこと、話してくれて。わたしが傷つかないように、話してくれたんだよね。」

「みちる…」
「少し不安になった。もし、翔太の思いが切れたらって。でも、わたし達、はじまったばかりだから。きっと、もっともっと好きになっていく。だから、大丈夫。」

みちるは笑顔で話すと立ち上がり、なんだか色々考えて糖分消費したね!と、ソフトクリームを買いに行った。

七海は話し終えてホッとしながら、みちるの心の強さに驚いていた。

意地っ張りで、素直に甘えたりできない子だけど、とても優しくて、人をすぐ信じてしまう。

たとえ、裏切られて傷ついても、相手を感情的に責めることをしない。

むしろ、自分に非があったのではないかと、悩み続けてしまうのが、みちるの良いところでもあり、悪いところでもある。

だからこそ、七海は心配だった。
翔太とみちるに終わりがきた時、みちるはどうなるのか?

「心配しすぎるのは、やめよう!」
七海は、あえて口にだし自分に言い聞かせた。

翔太とみちるは、まだはじまったばかりなのだから。

「わぁ~溶けてきちゃった!七海はやく食べて!」
みちるが両手にソフトクリームを持ち、小走りで戻ってきた。

ふたりでソフトクリームを食べながら、外にちらつく雪を眺めてたわいもない話しをし続けた。
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