夢でもいい
テレビの前に出しっぱなしのゲーム機があった。

どんなゲームが好きなのか興味がわき、テレビに近づいた。

マリオカートのケースがあった。

「あ、わたしもこれ好き!」

他にもDVDのケースやらがいくつか重なっていた。
ふと、テレビ画面を囲むようにプリクラが貼られているのに気付いた。

そのプリクラを見ようと顔を近づけたところで、翔太が飲み物とケーキを持ってきた。

「お待たせ!う~重い!」
「あっ、大丈夫?!」


ふたりでケーキを食べなら、たわいもない話しをしていると、時間があっという間に過ぎた。

部屋もだいぶ暖かくなり、窓は白く曇り、結露となって水滴が張り付いていた。

「なんかお腹もいっぱいで眠くなってきたね~」

4人分はあるだろうワンホールのチーズケーキを、ふたりで食べてしまい、お腹はぱんぱんだ。

「みちるがこんなに大食いなんてな!よく太らないよな。」

「あんまりにも美味しかったからさ、食べすぎちゃった。」

話しながら、ふたりはゴロンと床に寝そべった。

天井には、オリックス時代のイチローのポスターが貼られていた。

「うわ!あんな所にも。よく貼ったね!」

「ああ、小学生の時、親父に肩車してもらって貼った。なんでか、寝ながらでもイチローを見てたら、俺もイチローになれると思ったんだよね。」

ああ、翔太は本当に野球が好きなんだ。

みちるは、横に寝そべっている翔太を見た。

少し悲しそうな横顔が、なんだかとても愛おしく思えた。

みちるの視線に気づくと、翔太は顔をみちるに向けた。

一瞬の出来事。

翔太が静かに体を起こし、みちるに顔を近づけたと思うと、キスをした。

あまりに急だったので、みちるは瞳を開けたままだった。
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