夢でもいい
みちるは、はじめて翔太が怖いと感じた。
まるで別人のような目つき。
押さえ込む、手の力強さ。

翔太は、荒々しくみちるの中に入ってきた。

―翔太が、怖い―

「…やめて、翔太」

翔太の吐息がどんどん荒くなる。

「痛い…、痛いよ。お願い、やめて…!」

必死に振りほどこうとしたみちるの視界に、テレビに貼られていたプリクラが見えた。

ともだちとのプリクラのなかに、元カノたちと撮ったプリクラがあった。

☆翔太LOVEミカ☆
抱き合って頬にキスをした幸せいっぱいなプリクラ。

―信じて。翔太は、みちるのこと本当に大事に思ってる。―

七海の言葉が聞こえた。


抱きしめらるてるのに、キスされてるのに、わたしとプリクラの中のミカは全然ちがうよ。

「…七海、本当に信じていいんだよね?」

脳裏に浮かんだ七海は、にっこり笑ってみちるの頭を撫でた。


みちるは、だらりと体の力を抜き、瞳を閉じた。

告白に、うんと返事をしたときの彼の顔を浮かべた。

キラキラした満面の笑みで、「今日からみちるは俺のもんだ!」と、みちるを抱きしめて大声で叫んだ。

幸せな記憶を精一杯思い出し、まぶたを固く閉じ、恐怖の時間と痛みが過ぎ去るのを待った。

「翔太…」

みちるのかすかな声は、彼には届かなかった。
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