夢でもいい
すると、翔太は両手でみちるの顔をあげると、苦しそうな表情を浮かべ、みちるを見た。

「みちるがこんな事するなよ!
俺が無理矢理あんなことしたのが悪いのに!
…あんなの、あんなの、レイプと変わんねぇよ…!」

翔太は、瞳を閉じて奥歯をぎりっと鳴らした。

「ちがう!」

みちるは必死に否定した。

「わたし、初めての相手は翔太なんだって思ってた。
翔太じゃなきゃ絶対に嫌だった!
ロマンチックにはいかなかったけど、わたしの初体験をそんな風に言わないで…」

みちるの瞳から涙がこぼれ落ちた。

ひどく自分を責める翔太を見て、胸が苦しくなったからだ。

翔太の苦しみが、自分に流れ込んでくるようだった。

「みちる…」

翔太は困惑したような表情で、どうしていいか分からず、みちるをそっと抱きしめた。

静かな理科室に、みちるがしゃっくりをあげて泣く音が響いた。
< 28 / 31 >

この作品をシェア

pagetop