氷の女王に誓約を

早口で喋る男性記者。


最初の方は聞き取れていたみたいだけど、周囲の喧騒が手伝ってか、中盤以降は首を傾げて視線をキョロキョロと泳がせている。


小声でこっそり「代表になる自信はあるかって」と教えると、朝ちゃんはうんうんと力強く首を縦に振った。


「あるかないかと言ったら……あるかな? 代表に選ばれるのは凄く大変だってことはわかるけど、自信がなかったら日本に戻らないです」


おお、強気発言。男の子だなぁ。


「もしかしたらお兄さんと代表枠を賭けて戦うこともあるかもしれませんが、お兄さんに勝つ見込みはあるでしょうか?」


別の記者さんが質問を投げかける。


兄弟対決を煽ってるなこの記者さん。でも確かに面白そう。


今度はキチンと聞き取れたようで、朝ちゃんは顎に手を当てながら小さく唸った。


「うーん……わかんないです。だけど兄のコーチから『ポテンシャルだけなら弟の方が上』って言ってくれたので、ちょっと自信はあるかな」


おや、その発言は初耳だ。
< 114 / 400 >

この作品をシェア

pagetop