氷の女王に誓約を
「世界選手権の時は凄かったなぁ。五輪の出場枠がかかった大事な試合で、大塚さんと羽生さんがボロボロで、しかもタクちゃんは最終滑走。それでも試合で初めて四回転を決めて、自己ベストを大幅更新。四位入賞だもんね」
「……うん」
「朝ちゃんは知らないと思うけど、タクちゃんって結構モテるんだ。ファンクラブも出来てるみたいで、試合でもたくさんのプレゼントをもらってるし。学校でも色んな人に告白されてたらしいよ? ほんと『どこの少女漫画だよ!』って感じだよね」
「……ん」
―――あれ、おかしいな。
話をすればするほど、朝ちゃんの口数が少なくなる。
試しに口を閉ざしてみたら、簡単に無音の空間が出来上がった。
明るく陽気で饒舌な朝ちゃんが全く喋ろうとしない。
私に髪の毛ブンブンされるのがそんなに嫌だったのか? いやでも最初こそ拗ねてたものの、途中からは全く意に介してない素振りだったけど……。
「あ、朝飛キュン?」
声をかけても返事がない。