氷の女王に誓約を

「やだぁ。勝手に引っ掛かったのはそっちでしょ。寧ろ大事なキャメラをこうしてキャッチしてあげたんだから感謝してほしいくらいだわ」


そして野田さんは、


「をっとぉ! 手が滑っとぅあああああ!」


力いっぱいカメラを地面に叩きつけた。


なんか一杯破片が飛び散り、男の悲鳴が周囲に木霊する。


落下の衝撃でメモリーカードが飛び出し、野田さんの足元に転がり落ちると、狙ったかのようにヒールのピンがカードを捉えた。


パキッと小さな音を立てて、メモリーカードは真っ二つ。


「ごめんなさいね。ゴキブリかと思って踏んじゃった」


鬼だ。この人、生粋の鬼だ。


「このクソ野郎! 折角の特ダネを潰しやがって、どうなるかわかってんだろうな!」


男は会場中に聞こえるほどの怒号をあげる。


そりゃあ大事なカメラを壊されて、メモリーカードを潰されちゃ怒りたくもなるよなあ。
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