氷の女王に誓約を

氷の感触を確かめて、ジャンプのタイミングを確かめるために軽く一回転を跳ぶ。


アナウンスが流れ、前の選手の得点が発表された。


70.19。タクなら越せる得点だ。


いよいよタクの番が回って来る。


「弟が観に来てるんだろ? 兄の威厳を保つためにも、ここらで世界の広さを見せつけてやれ」


困ったように苦笑すると、奴は「やってみます」と気の抜けた返事を返してリンクの中央へ向かった。


返事こそは弱弱しいが、その目つきは鋭く良い瞳をしていた。


あの目なら大丈夫だ。


ほどよい緊張感の中にも、絶対の自信が垣間見える。


「生まれ変わったお前を魅せてやれ」


客席は全てタクの味方。


温かい拍手に後押しされ所定の位置に着くと、いよいよ演技が始まる。
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