氷の女王に誓約を

タクお得意の高速I字スピン。男子でI字を出来る選手はタクしかいない。


チェンジエッジ、キャノンボール、I字スピン。そしてI字で八回転以上。


最後まで気を抜くことなくレベルを取り、余韻を残しながらSPは終了した。






―――活気に湧くスタンディングオベーションの会場。


深々と頭を下げて投げ込まれた花束を拾いあげると、口元に弧を描きながら上機嫌にリンクから降りる。


「初戦にしちゃ上出来だ」


余り褒めすぎて調子に乗ったらいけないので、労いの言葉も少々控えめに抑えておく。


奴は調子に乗るとすぐ暴走するからな。


世界選手権でもあれだけ「今は枠取りが優先事項だ。リスクが高い四回転は回避して枠を確実に取りに行くぞ」と釘を差したのにもかかわらず、調子が良いからという勝手な判断で跳びに行ったような奴なのだ。


結果的に成功して四位入賞したから良かったものの、下手すりゃ五輪の枠が一つになる所だったのに。
< 226 / 400 >

この作品をシェア

pagetop