氷の女王に誓約を

だからまだベタ褒めはしない。まだ明日のFPも残っている。


普段なら「厳しいですね」と不満を溢すのだが、今日はなぜか素直に頷いた。


「緊張し過ぎて全然足が動かなかったけど、なんとかまとめられて良かったです」


「は?」


堪らず間抜けな声を出してしまった。


全然足が動かなかった? あんだけ完璧な滑りをしたのに、まだ余力が残ってるのか?


俺の声が聞こえなかったのか、タクは差し出したブレードカバーを受け取ってキス&クライへ移動する。


俺も隣に座り、水とジャージを手渡した。


「とても緊張してるようには見えなかったけどな」


後半は王子スマイル全開の素の表情で滑っていたから、緊張などしていないと思っていたのに。


「最初はガクガクでしたよ。でもイーグルから落ちついて演技出来たんで、後半はまだまともに滑れたけど」
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