氷の女王に誓約を

頼れる人が身近にいない。だからこそ朝飛は真っ先に俺に電話をかけたのだろう。


父さんに連絡したところで、物理的にも社会的にも今すぐ日本に帰国なんて不可能だ。


社運を賭けた大プロジェクトのリーダーを任せられているようだし、どんなに急いでも二日三日はかかるだろう。


幸い母さんも命に別状はなかったし、すぐに元の生活に戻れるらしい。


だったら余計な心配はさせない方が良いだろう。きっと母さんもそれを望んでいるはずだ。


あーでも、美優には一言言っておかないと。


連盟の人を通してもう耳には入っていると思うけど、心配ないからとメールしよう。後、おばさん達も中国を楽しんでくださいって。


きっとおばさんのことだから、俺たちのことを按じて日本に戻ってくるだろう。


折角家族旅行を兼ねている試合観戦なんだから、俺たちのせいで貴重な家族団らんを潰しちゃ申し訳ない。


とはいえ病院内でケータイは御法度。この時間じゃ外に出るのも無理だろう。


仕方ないから公衆電話を使うか。確かロビーにあったはず。
< 246 / 400 >

この作品をシェア

pagetop