氷の女王に誓約を

バックから財布を取りだそうと漁っていると「んんっ」という小さな呻き声みたいのが聞こえた。


反射的に朝飛の方へ目をやるが、彼はスースーと気持ちよさそうに寝息を立てている。


ということは……。


「母さん?」


枕元で静かに声をかけると、ゆっくりと重い瞼を開けて、虚ろな瞳で俺を捉えた。


「……タク?」


「良かった。気分は? なにか飲む?」


「え……と、ここは?」


まだ意識がハッキリしていないのもあるのだろう。自分の置かれている状況が理解できていないようだ。


朝飛から聞いた情報も交えて、目が覚めるまでの数時間の出来事をなるべく細かく説明した。


後は医師から説明された術後の入院生活のことを中心に教えた。ここが一番大事なので念入りに。
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