氷の女王に誓約を

大塚さんがコーチに就いてくれるのはありがたいことだし、世界で活躍したトップ選手が直々に指導してくれるのは俺にとってプラスなこと。


だけどその分、周りのプレッシャーも凄いことになるのは必至だ。


それに俺は五輪に出場できると決まったわけじゃない。というより、出場できない可能性の方が高い。高すぎる。


ていうか、大塚さんに渡せるコーチ代なんてない!


「もう決定事項だ、諦めろ。俺がいない間は大塚に見てもらうようにする。ちなみにコーチ代は出世払いでいいらしいから、確実に結果を残せよ」


フッと口元に冷笑を刻んで、コーチは手元のバインダーに視線を落とした。


「というわけだから宜しくなタッくん。遠慮なく俺を扱き使ってくれ」


手を差し延ばす大塚さん。


もうこうなってしまったら俺がどうこう言おうがどうにもならない。


もう二年近くもこの人の元に就いているのだ。コーチの唯我独尊っぷりは半ば諦めている。


なんだかんだで大塚さんと一緒に練習できるのは嬉しいし、彼の技術を目の前にすれば色々と参考になるだろう。
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