氷の女王に誓約を

起こしたかと思ったが、そのまま寝息を立てて再び夢の世界へ。


「ここ病院。個室だからってこんな夜中に大声だしたら怒られるって」


「だって、ファイナル出場がかかってる大事な試合なんでしょ? 私ならもう大丈夫だから、朝一の便で早く行ってきなさい」


「それは無理」


首を左右に振って否定の意。


いくら母さんでも、この願いだけは叶えられない。


「暫く入院するんだから着替えやらなんやら用意しなくちゃいけないし、そんな身体じゃロクに動けないだろ? 美優のおばさんも今中国だし、朝飛だって学校もある。俺しか母さんの世話が出来ないじゃないか」


正論を突き付ける。


腹を裂く大きな出術をしたばかりで、一人で立つことさえままならないと医師から聞かされた。


こうして会話をしている最中でも、麻酔が切れ始めて手術の痕が痛み始めているはずだ。


周囲に頼れる人はいない。朝飛は義務教育中で、学校を休ませるわけにはいかない。
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