氷の女王に誓約を
その点俺なら都合が良い。
大学なら多少の休みならなんとかなるし、試合に出場する予定だったから講義も公欠扱いだ。
父さんもあてには出来ない。時間の余裕があるのは俺一人だけ。
「それに、俺が中国行ったら朝飛はどうすんだよ? お手伝いさん任せでロクに家事も出来ないんだぜあいつ。家の中がメチャクチャになるのが目に見えてるって。だからさ……」
俺は言う。
「少しは息子に甘えろって。なっ?」
たった四人の家族なんだからさ―――
沈黙の後、母さんは困ったように微笑むと、視線を下げて小さく溜息をついた。
呆れというより、悲しみの籠った吐息。
「子供の足を引っ張るなんて、ほんっと最低な母親。こんなんだから、おじいちゃんとおばあちゃんにも愛想尽かされるのよね」
こんな時「そんなことはない」と一言かけるべきなのだろう。