氷の女王に誓約を
他の競技と違いお金がかかるフィギュアスケートは、裕福な家庭でなければなかなか続けることは叶わない。
家は決して裕福ではないし、まして祖父祖母の援助はなし。
それでも俺と朝飛にスケートを続けさせてくれた。
最低な母親だったら、金のかからないスポーツにシフトさせたはずだ。
「俺も朝飛も、父さんと母さんに感謝してる。だから面倒見させてよ。五輪なら全日本で優勝すればいいんだからさ」
それが一番難しいというのは、もちろん母さんもわかっている。
咄嗟に飛び出した言葉だけど、これは敢えて逆効果かも。嗚呼、我ながら口下手な励まし方だ。
これじゃあ俺が優勝しないと、余計母さんが自分を責めてしまうじゃないか。
「……まあ、元々俺の実力じゃ五輪なんて夢のまた夢なんだけど」
予防線を張っておく。一応事実なので、自然と笑みは苦くなる。
けど、夢を夢のまま終わらせるつもりは毛頭ない。