氷の女王に誓約を

朝飛も良い演技をするかも知れないけど、弟の分幾分マシだ。


寧ろ「兄として弟に負けるわけにはいかない!」と、兄の威厳を保つためにいつも以上の力を発揮できるかもしれない。


「そういえば、朝飛の姿が見えな……」


キョロキョロと辺りを見渡すと発見した。


隅のベンチで縮こまっている弟の姿を。


「完全に呑まれてるな」


「ですね」


大塚さんが話しかけているようだけど、朝飛は俯いたままで反応を示さない。


朝飛があんなに緊張している姿、初めて見た。


いや、普通はあれが正常な反応なのだろう。


日本のフィギュア人気は、もはや異常と呼ばれる域に達している。


美優の活躍に比例して、フィギュアスケートという競技自体の人気が急上昇。全日本のチケットも即完売だったらしい。
< 301 / 400 >

この作品をシェア

pagetop