氷の女王に誓約を
国際大会でさえ空席が目立つというのに、ただの国内大会でチケット争奪戦が起きる始末。
ジュニアでしかも海外で戦ってきた朝飛にとって、この異常なまでの空間は精神的に堪えるはずだ。
満員の会場。逆転可能な順位。初めてのシニアの代表選考会。
期待と緊張が一気に圧し掛かる。
六分間練習で羽生さんと大介の覇気をモロに喰らってしまったのか、練習中も委縮していたし、内心はボロボロだろう。
あの独特の緊張感は、いつになっても慣れないものだ。ジュニアの朝飛にはキツすぎる。
「ああ見えてナイーブなんですよ。よっぽどなことがない限り堕ちないですけど、堕ちたらとことん堕ちちゃうんです」
「可愛げがあるじゃないか。どこかの誰かさんとは違って」
「男に可愛げって必要あります?」
「少なくとも教え子にはあって欲しかったな」
過去形ですか。そうですか。