氷の女王に誓約を
「……はぁ?」
この子は何を言っているのだろう? 疲労が蓄積して頭がおかしくなってしまったのだろうか?
きっと俺の聞き間違い。もしくは疲れているのは俺の方で、幻聴が聞こえたのかも知れない。
エキシビションが終わったら休暇をもらおう。そうしよう。
だから俺は美優に今一度聞き直す。
「俺がなんだって?」
「私のアシスタントコーチ就任。あっ、正確にはスケーティングコーチ就任? まあ肩書きなんてどうでもいいよね」
「確かにどうでもいいな。だが、コーチ就任の件は聞き捨てならない」
俺がコーチ? しかも美優の?
いらないだろ。俺の指導なんて一ミリもいらないだろ。
美優にはゴールドメーカーの異名を持つ世界的な名コーチ、タラソワさんが付いている。