氷の女王に誓約を

日本語もある程度喋る人だし、コミュニケーションもなんら問題はない。アシスタントなど必要ない。


そもそも俺みたいな三流スケーターが、世界最強の女王様に教えることなんて一つもないのだ。


それに五輪代表には選ばなかったが、俺は世界選手権の代表である。五輪に行く暇などない。


「却下だ却下。現役の選手が現役の選手のコーチなんて出来るわけないだろ」


「じゃあボディガート兼通訳で。ネットで色々調べてね、行きたい所たくさんあるんだ!」


「……なあ美優。もしかしてお前、五輪と観光を混同してないか?」


「五輪は冬の祭典でしょ。それに楽しめって言ったのはタクちゃんじゃない」


いや、確かに楽しめとは言ったけどさ。俺が言ったのはあくまで“試合”であって、決してバンクーバーという都市や自然を観光的な意味で楽しめと言ったわけではない。断じてない。


「他の競技の日本代表を応援するでしょ。街に出て五輪限定グッズも買わなくちゃいけないし、カナダの伝統料理も堪能しなくっちゃ。後、ビーバーのダムも見たいな!」


ビーバーのダムとか凄いマニアックなところを攻めるな……。

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