氷の女王に誓約を

「そうですか。では明日、またお伺いします」


笑顔で返す町田さん。まだ新米ジャーナリストだが、礼儀もしっかりしていて好感が持てる。


だから余計、不安になるのだ。


「あの、本当に私なんかのインタビューでいいんですか?」


町田さんの出版社が発行するスポーツ雑誌に、新たに『往年の名選手達の今』という特集が組みこまれるらしい。


その特集を任されたのが町田さん。そしてあろうことか、その記念すべき第一弾の出演を依頼された。


正直荷が重すぎる。インタビュー中も手の平に嫌な汗がじっとりと湧いたくらいだ。


「私なんかよりもっと有名な選手は山ほどいるでしょうに。私の現役時代の昔話など、聞いても退屈でしたでしょう?」


すると彼は首を左右に振ると、笑顔でこう切り返してきた。


「なに言ってるんですか。橋本拓斗のスケート人生は、これから面白くなるんでしょう?」
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