氷の女王に誓約を
タクのFPの演技構成点。その評価の一つであるスケーティングスキルは、8.4という評価を得ていた。
8点台はトップ中のトップの証。だが羽生は、そこに疑問を投げかける。
「タクのスケーティングは間違いなく現役最高の代物だ。いや、歴代最高と言っても過言じゃない。現に俺達と見比べても雲泥の差だ。あれに対抗出来るのはミューぐらいだろう」
羽生は続ける。
「もし俺がジャッジだったら9点台は出していた。10点を出したジャッジが居ても不思議じゃない。だが実際に出た得点は8.4。明らかに得点を押えられている」
大介の脳裏にタクの演技が走馬灯のように蘇る。
冒頭の転倒。演技中断。そして再開。
得点を押えられた原因はそこにあると、直感的に感じ取る。
いくら歴代最高のスケーティング技術を持っていても、冒頭にしかもただ滑っている個所で転倒してしまっては、とてもじゃないがスケーティングが優れているとは言い難い。
不慮の事故とはいえ、転倒してしまった事実は変わらない。
おまけに演技を中断してしまったのだ。ジャッジの印象は良くないだろう。