氷の女王に誓約を

「ここから先はあくまで俺の仮説だけど、転倒して演技を中断した選手を、四回転を計三回成功させたノーミス選手の上に立たせたくないという心理が少なからず働いたと俺は思う。
俺がジャッジだったらそうするし、ジャッジじゃなくても普通に考えたらノーミスの選手を上に立たせたいだろ」


羽生の解説も一理あると大介は思う。


フィギュアは複雑な採点競技だ。


見た目ノーミスの選手が回転不足を取られて点が伸び悩んだり、逆に転倒があったものの他のエレメンツの質が良くて優勝してしまう選手もいる。


だがそれでも、大きなミスをした選手がノーミス選手の上に立つことは滅多にない。


ジャッジがタクの得点を抑えたのは当然のことだし、羽生の仮説も客観的な正しい意見だとも思う。


だが、大介の腸は煮えくりかえり、拳はワナワナと震えていた。


「……けんな」


大介は叫ぶ。


「ふざけんな! それじゃあまるで、俺がお情けで優勝したみたいじゃないか! そんな“たられば”はスポーツじゃ通用しないんだよ!」
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