氷の女王に誓約を

「俺は別にお前の優勝が不当だと言ってるわけじゃない」


「じゃあなんでそんな癪に障るようなこと言うんだよ!」


「癪に障ると言うことは、お前がそのことを一番気にしてるってことじゃないのか?」


「それは……!」


図星だった。


たらればなど無意味と言っている大介自身が、そのたらればをもっとも気にしていた。


勝った気がしない。勝利の余韻に浸れない。


もしあのミスがなければ順位はひっくり返っていたと、心の中で思っていた。


タクに勝ちたかった。絶対に負けたくなかった。


代表選考とか関係なしに、タクとの勝敗に全てを注いでいた。


普通の転倒だったら素直に喜べたはずだ。所詮そこまでの選手ということで納得できる。


ただ、あの転倒が不慮の事故によるものだったからスッキリしない。
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